――まず、この話が来たときの感想をお願いいたします。
菊池晃一制作プロデューサー(以下、菊池))3、4年前のことですね。
やまねあやの先生(以下、やまね))アニメって、ファンにとっては作画がきれいなことがすごく大事なことじゃないですか。原作の絵を忠実に再現できると聞いて、それが本当にできるなら見てみたいなと思ったのが最初です。だいぶ期待感がありましたね。
菊池)実は最初に作ったもの、ボツにしてるんです。
やまね)そうでしたね。
――その絵を見られたとき、先生は?
やまね)最初見たときは、やっぱりこれは無理だなって思ったんです(笑)。
菊池)ドキッ(笑)。
やまね)すいません。ぶっちゃけていいですか?(笑)
菊池)どうぞ言ってください(笑)。
やまね)最初、原作の絵を取り込んで作る、という手法を取られていたんですが、それだと(小さいコマなどが拡大されて)かなり線が太ってしまって、表情が死んでしまったりしたんです。とくにBLって絵への“萌え”が大事なので、線の一本一本まで気を遣われないと…というのでボツが出てしまったんですね。
菊池)先生がおっしゃっていることはよく分かったので、それで(先生や作品のことが)好きなスタッフに替えたんです。
――新しい、その絵を見られたときは?
やまね)正直、かなりきれいに直ったなって思いました。
菊池)そう言っていただけると安心します(笑)。
やまね)男の子ならではのかわいい表情とか、よく分かって描いてくださっていて、美しかったですね。
菊池)先生の絵は綺麗なので、それを再現しようとするともう大変でした。
やまね)バランスが難しいんですよね。ちょっと鼻が長かったり、おでこが広かったりするとアレ?って感じの絵になっちゃう(笑)。微調整が難しいんですね。
――そういう意味で、先生の絵はANiMiXという媒体に向いていますね。
やまね)そうですね。
――去年のAGFで先生の作画講座がありましたが、その際に相当こだわっていらっしゃるんだなと思いました。一番こだわっていらっしゃっているのが“乳首”っておっしゃってましたよね。
やまね)乳首です! すいません(笑)。
――ANiMiXではどうでしたか?(笑)
やまね)ANiMiXでもかなり乳首にこだわりました(笑)。でも監修時、一話目より二話目の方が明らかにクオリティーが上がってました!…語っちゃっていいんですかこれ?(笑) 乳首にハイライトが入る部分があるんですけど、後から監修した二話目ではツヤツヤした、ぷっくりした感じのかわいい乳首になっていて。水滴がしたたるようなシーンも処理が綺麗になっていたんですね。女性が好きなタイプのアニメの表現になってたんです。それで、「二話目の通りに、一話目の乳首を全部直してください」と(笑)。
菊池)作画担当者の愛が、どんどん深まっていっていましたから(笑)。
やまね)作り込みがすごくなって、乳首だけでなく、普通のアニメだとできないような髪の毛の塗り方とかもしてくださっていて。そこがANiMiXの良いところかなと思います。
――今回、一流どころの声優さんたちがたくさん出られていますが、(ドラマCDと比べて)演技などいかがでしたか?
やまね)絵がつく分、感情移入の仕方がより深くなっているのかなと思いました。特に、麻見役の黒田(崇矢)さんは結構渋い感じの声の方で、ドラマCDだと怖い感じの演技をされていたんですが、(ANiMiXの麻見の)絵が若い絵なんですね。(コミックスの)1巻の絵なので若めの顔つきというので、演技も若く、ちょっとだけさわやかに演技されて。(ドラマCDでは)掴みかねていた部分が、絵があることによって、さらに“麻見”というキャラクターを掴んでいただけたのかなと。
――他の方々はいかがでしたか?
やまね)(秋仁役の)柿原(徹也)さんも頑張ってやってくださいました。他の皆さんが休憩を取っているときにも、ご自分から「残ってやります」と言って収録していたんですね。すごくやる気が感じられました。
――飛龍役に飛田(展男)さんも出演されていますね。
やまね)飛田さんは本当に雰囲気がある方で、すごくカッコよくしていただきました。すごく色っぽくって、間男的存在なのにこんなに色っぽくっていいのかな?っていうくらい。むしろもう、主役は飛龍でいいんじゃないの?みたいな(笑)。
――本命がそっちになっちゃう(笑)。
やまね)もっと出番を増やしたくなるくらい色っぽく演じてくださいました。
――今回のANiMiXの一番の見どころはどこですか?
やまね)さっきも言ったとおり、普通のアニメでは再現できないぐらいの色の塗りとか、表現のクオリティーが高いということですね。髪の塗り方とか乳首や水滴の表現も、アニメだとさらっと流されてしまうところを、綺麗に仕上げていただいているので、そこが一番の見どころですかね。普通のアニメと比べるとどうしても動きがないので、その部分を絵や演出で…っていう感じでしょうか。
菊池)魅せ方でね。
――今回のANiMiXをご覧になって、ご自分の作家活動にはね返ってくるようなことなどありますか?
やまね)もちろんあります。頭の中で想像していたものが実際に動いているわけですから。「このキャラはこういうふうに動かすとカッコいいんだ」と、改めて視覚的に認識できた部分が大きかったですね。
――またやってみたいですか?
やまね)やってみたいですね。(今回は)試行錯誤で作った部分もかなり大きいですけど、次作るとなるともっといろいろな演出も見てみたいです(笑)。
菊池)ドキッ!(笑)
やまね)迷いながらやっていた部分が、迷いなくできるのかなって。なかなかBLってアニメにはならないですが、BLにもすばらしい作品がたくさんあるので、アニメになるとファンの皆さんも見る機会が増えて喜んでいただけると思いますね。(監督の方を見て)頑張ってください(笑)。
菊池)ありがとうございます(笑)。
――菊池プロデューサー、今回の作品制作はいかがでしたか。
菊池)スタッフもみんなやまね先生のことが大好きで、先生への愛が全部納まったフィルムなんですよ。実は色塗りと絵描きスタッフの二人が主婦なんですけど、彼女らは他の時間を割いてまでずっと「先生のために!!」ってやっていました(笑)。
やまね)それを容赦なくリテイクに(笑)。
菊池)いや全然。実はリテイクを喜んでいたんですよ。
やまね)そうなんですか?
菊池)頂いたリテイクに「なるほど!」と納得しながら。本当に愛たっぷりで、喜んでやっていました。他の仕事があるにも関わらず、そちらを置いてこちらばかり。私としては全然いいんですけど(笑)。
――プロデューサーから見て、今回のANiMiX『ファインダー標的』の魅力はどの辺になりますか?
菊池)今回は、とにかく先生の絵をどこまで再現できるのか。どこまで近づけられるのか、というところですね。先生の理想に持っていける=ファンの方に喜んでいただけるってことなので、そこに重心を置きたいなと思って作りました。
――やまね先生から、菊池プロデューサーに一言お願いします。
やまね)本当に素晴らしいものを作っていただいてありがとうございます。すごく楽しく見られました。
菊池)私、ずっとドキドキしていました。
やまね)原作者に対してイメージを崩さないようにとか、なかなかアニメだとできないですよね。
菊池)アニメは流れ作業ですからね。
やまね)原作に対してこんな風に思い入れを持って作ってくださるってなかなかない機会なので、本当にもうありがたくて…ありがとうございます。
菊池)私もこういう機会を与えていただけて、すごく嬉しいです。
やまね)そうですか?
菊池)もちろんです! 続編作りたいですね。
やまね)そうですね。今回は(コミックス)1巻の絵なんで、自分的に稚拙な絵なんです。
菊池)今の絵とまた違いますね。
やまね)全然違います。今(コミックスは)6巻まで出てるんですが、今の絵でのものをお願いしたいです(笑)。
――今回、ジャケットイラストも描き下ろしですね。
やまね)ペン入れまでして、仕上げはアニメーターさんにやってもらったんです。
菊池)ANiMiXの色を塗った者に塗ってもらいました。
やまね)自分が塗らなくていいっていうのがすごく楽だー!と思って(笑)。
菊池)余談ですが、実は今回の彩色をした者は、ゲームの彩色もやってる者なんで、少しゲーム塗りっぽくなっています。
やまね)あ、髪の毛とかそうですよね。
菊池)ブラシ使ったりとか。アニメでは動くことを前提としているので、あんまり色を分けて塗れないんですよね。逆にANiMiXは絵を見せることが前提なので、細かく塗れるんです。
――特典物はポストカードセットですね(アニメイト特典「ファインダーの標的」、リブレ通販特典「FIXER」より)。やまね先生の美しい原画と、そのコマがANiMiXになったらどうなるか、というのを一枚のポストカードにして一緒に見せてという…。
やまね)こうやって並べて見ると、すごく良いです! 自分の中でイメージしているものが色になって出てきているのが嬉しい…! この港の夕暮れのシーン(「ファインダーの標的」ラスト近く)がほんとに好きなんです。白黒の漫画では表現できないものがそこに全部入っていて…それがANiMiXの良いところですね。
菊池)並べると魅力が分かりますね。
やまね)これは確かにアニメにはできない魅力ですね。
――ありがとうございました!
菊池)ありがとうございました!
やまね)こちらこそありがとうございました!